Antigravity Skills:AIエージェントに「必殺技」をインストールする魔法
Google Antigravityの「Skills」機能を徹底解説。汎用AIエージェントを、あなたのプロジェクト専用の最強エンジニアに進化させる「知識パッケージ」の作り方と可能性について。
毎日Antigravityとペアプログラミングをしていて、ふとこんなことを思ったことはありませんか?
「毎回同じプロジェクトのルールを説明するのが面倒だ…」 「この特定のライブラリの使い方、ドキュメントを見ないと忘れてるのに…文脈が伝わりにくい」
汎用的なAIは優秀ですが、あなたのチーム独自の「暗黙知」や、ニッチな技術スタックの「作法」までは知りません。
しかし、Antigravityにはそれを解決する強力な機能があります。それが 「Skills(スキル)」 です。
Skillsとは何か?:エージェントへの「インストール可能な知識」
一言で言えば、Skillsとは 「エージェントに特定の専門領域やタスク遂行能力を後付けでインストールする仕組み」 です。
公式ドキュメントでは以下のように説明されています:
Skills are folders of instructions, scripts, and resources that extend your capabilities for specialized tasks. — Antigravity Skills Documentation
ゲームでキャラクターにスキルブックを使って新しい魔法を覚えさせるような感覚を想像してください。AntigravityにおけるSkillsもまさにそれです。
通常のエージェントは「何でも屋」ですが、Skillを読み込ませることで、瞬時にその領域の 「特化型エキスパート」 へと変貌します。
技術の正体:驚くほどシンプルな SKILL.md
「エージェントの拡張なんて、複雑なPythonスクリプトを書く必要があるのでは?」と身構える必要はありません。
Skillsの技術的な正体、それは たった一つのMarkdownファイル (SKILL.md) です。
- SKILL.md: メインの指示書。「このスキルを使う時はこう考えて、こう動け」というプロンプトの塊。
- scripts/ (Optional): 必要に応じて実行させるシェルスクリプトやツール。
- resources/ (Optional): テンプレートファイルや参照用ドキュメント。
エージェントはタスクの文脈に応じて、適切な SKILL.md の中身を自動的に(あるいは指示によって)読み込みます。まるで映画『マトリックス』で主人公がヘリコプターの操縦法を脳にダウンロードするように、そのMarkdownに書かれた知識と手順を即座に自分の能力として取り込むのです。
実際のSKILL.mdを見てみよう
言葉で説明するより、実物を見た方が早いでしょう。以下は、ブログ記事作成を自動化するSkillの例です:
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name: blog-writer
description: プロジェクトのブログ記事を作成するスキル
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# ブログ記事作成スキル
## 概要
このスキルは、当プロジェクトのブログ記事を一貫したフォーマットで作成します。
## 記事フォーマット
1. **Frontmatter**: title, pubDate, description, category, heroImage を必ず含める
2. **導入文**: 読者の悩みや疑問から始める(共感ファースト)
3. **本文構造**: H2で3〜5セクションに分割
4. **結論**: Next Actionを必ず提示
## 禁止事項
- 一人称「私」は使わない(「私たち」はOK)
- 専門用語は初出時に必ず説明
- 800文字未満の記事は作成しない
## 参照ファイル
- テンプレート: `resources/blog-template.md`
- 過去記事: `src/content/blog/` 配下を参照
たったこれだけです。YAMLのフロントマターでメタ情報を定義し、Markdownで手順やルールを書くだけ。プログラミング不要で、あなたのドメイン知識をエージェントに注入できます。
実践的なユースケース:こんな「必殺技」が作れる
では、具体的にどのようなSkillsを作れば開発が加速するのでしょうか?
1. 特定技術へのマイグレーション
例えば「古いOptions APIのVue.jsコンポーネントを、Composition API + TypeScriptに書き換える」というタスク。
SKILL.md に変換のルール、型定義のテンプレート、注意すべきアンチパターンを記述しておけば、エージェントはそれを忠実に守ってリファクタリングを遂行します。
2. 社内独自のデプロイフロー
「ステージング環境へのデプロイは、特定のコマンドを叩いた後に、SlackでBotに通知する必要がある」といった、世の中の一般的な知識にはない社内ルール。 これをSkillとしてパッケージ化しておけば、新人エージェント(?)でも「デプロイお願い」の一言で完璧な手順を実行できます。
3. セキュリティ監査
コードレビュー時に必ずチェックすべきセキュリティ項目リストをSkill化。「Security Audit Skillを使ってこのPRを見て」と指示すれば、人間が見落としがちな脆弱性を、定義された厳格な基準で指摘してくれるようになります。
結論:AIを「使う」から「育てる」時代へ
AntigravityのSkills機能が示唆しているのは、これからのエンジニアの役割の変化です。
私たちは単にコードを書くだけでなく、「エージェントがコードを書くための『知識(Skill)』を設計・実装する」 というメタな作業へとシフトしていくでしょう。
あなたのチームの「ベストプラクティス」や「熟練の技」を SKILL.md に書き起こし、エージェントに継承させる。そうして育て上げたエージェントチームこそが、最強の開発資産になるのです。