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エージェンティック vs デターミニスティック:AI時代のワークフロー革命

AI開発の新しい常識「Agentic Workflow」と従来の「Deterministic Workflow」の違いを、GoogleやAnthropicの定義を交えて徹底解説。

エージェンティック vs デターミニスティック:AI時代のワークフロー革命

「AIに仕事を頼んだのに、期待外れだった」

もしそう感じたことがあるなら、それはAIの性能不足ではなく、「持たせ方(ワークフロー)」 の問題かもしれません。

今、AI業界で最も注目されている概念の一つが 「Agentic Workflow(エージェンティック・ワークフロー)」 です。これは、単にAIに質問して答えを得る従来の方法とは一線を画す、自律的な問題解決のアプローチです。

この記事では、AIの権威であるAndrew Ng氏や、Google、Anthropicといった大手テック企業の定義を紐解きながら、従来の 「Deterministic Workflow(デターミニスティック・ワークフロー)」 との違いを徹底解説します。


1. Deterministic vs Agentic: 一言で言うと?

両者の違いは、「AIに『手順』を守らせるか、『目標』を守らせるか」 に集約されます。

Deterministic Workflow(決定的ワークフロー)

=「決められたレールの上を走る電車」

「入力Aが来たら、必ず処理Bをして、出力Cを出す」というように、人間が事前に全てのステップを設計するワークフローです。確実性が高く、開発者が意図しない動きを許しません。

  • 主導権: 人間(開発者)
  • 強み: 信頼性、再現性、監査可能性(Auditability)
  • 弱点: 想定外の事態に弱い、柔軟性がない

Agentic Workflow(エージェンティック・ワークフロー)

=「目的地だけ教えられたタクシー」

「この問題を解決して」というゴールだけを渡し、そのための手段(どのツールを使うか、どう検索するか、どの順序で考えるか)はAI自身に動的に判断させるワークフローです。うまくいかなければ、自分で方法を変えて再トライします。

  • 主導権: AIエージェント
  • 強み: 複雑な問題解決能力、柔軟性、自己修正能力
  • 弱点: 完了までの時間やコストが予測しづらい、制御が難しい場合がある

2. 大手AIベンダーの視点

Google Cloud (Vertex AI) の定義

Googleは、Agenticなシステムを**「認識(Perceive)、推論(Reason)、行動(Act)する自律的なシステム」**と定義しています。 一方で、Deterministicなパイプラインは、金融取引や医療データ処理など、100%の正確性と追跡可能性が必要なミッションクリティカルな領域で引き続き重要であるとしています。

Anthropic (Claude) の定義

Anthropicは、“Predictable execution”(予測可能な実行)としてのDeterministic Workflowの重要性を認めつつ、最新の「Computer Use」機能などでAgenticな自律性を拡張しています。 彼らの視点では、「ハルシネーション(嘘)を防ぎ、堅牢なシステムを作る」 ためにはDeterministicな設計が有効であり、「未知のタスクや創造的な試行錯誤が必要なタスク」 にはAgenticなアプローチが適しているとされています。


3. なぜ今「Agentic」なのか? (Andrew Ng氏の提言)

DeepLearning.AIの創設者であり、AI研究の第一人者であるAndrew Ng氏は、衝撃的な提言を行っています。

「GPT-3.5のような古いモデルでも、Agentic Workflowを使えば、GPT-4のような最新モデルを凌駕するパフォーマンスが出せる」

彼は、AIエージェントの能力を最大限に引き出すための4つのデザインパターンを提唱しています。

  1. Reflection(自己反省): 自分の出力を読み返し、「ここが間違っているかも」と自己修正する。
  2. Tool Use(道具利用): Web検索やコード実行など、外部ツールを自ら選んで使う。
  3. Planning(計画): 複雑なタスクを小さなステップに分解し、順序立てて実行する。
  4. Multi-agent Collaboration(協調): 「司令塔役」「コーディング役」「レビュー役」のように役割分担して協力する。

これらは全て、従来の「一問一答型」のAI利用(Zero-shot)では実現できなかったことです。


4. 比較まとめ:どっちを使うべき?

特徴Deterministic WorkflowAgentic Workflow
例え組立ラインのロボットアーム優秀なインターンや秘書
構造直線的(リニア)反復的(イテレーティブ/ループ)
失敗時エラーを出して停止別のアプローチを試す(自己修正)
適したタスクデータ変換、定型レポート作成、承認フローコーディング、リサーチ、記事執筆、複雑な質問対応
開発コスト設計コストが高い(全パターン網羅が必要)プロンプト調整やガードレール設定が中心

結論:ハイブリッドが現実解

「これからは全てAgenticになる」わけではありません。

例えば、「ユーザーの銀行残高を確認する」 ような処理は、絶対に間違いが許されないため、ガチガチの Deterministic Workflow で作るべきです。 一方で、「ユーザーの家計簿データを見て、節約アドバイスをする」 ような処理は、柔軟な発想が必要なため、Agentic Workflow が輝きます。

賢いAIエンジニアは、この2つを適材適所で組み合わせ、「信頼性」と「自律性」を両立させたシステム を構築しています。

Next Action: 今あなたが自動化したいタスクは、「手順が決まっている」ものですか?それとも「試行錯誤が必要」なものですか? もし後者なら、単純なプロンプトエンジニアリングを超えて、AIに「考えさせる」Agentic Workflowの導入を検討してみてください。